相続といえば、個人財産の相続を思い浮かべる方も多いと思われますが、被相続人が個人事業主や会社経営者である場合、個人財産の相続だけでなく、事業を誰にどうやって引き継がせるのかを悩んでいる方も多いと思います。いわゆる事業承継の問題ですが、事業承継を考える際には、その方法(贈与や譲渡、相続等さまざまな方法が考えられるでしょう)から、それに伴う税金対策のことまで、入念な事前検討・準備が必要です。この内、相続による方法を簡単に述べれば、遺産相続の際の遺産分割を利用して後継者に自社株式を相続させるものということになるでしょうが、自社株式を誰が相続するのか相続人間で争いにならないように、適切な遺言書を残しておくことが必要です。中小企業の場合、旧代表者(被相続人)が所有する自社株式の割合が、相続財産全体に占める割合の多くを占めている場合もあります。仮に自社株式が相続人らに分散して承継されてしまうと、今後の会社経営に支障をきたす場合もあり問題ですから、被相続人としては自社株式を集中して後継者(例えば相続人の1人)に承継させたいと思うことも多いでしょう。しかし、その場合、その他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。他相続人が遺留分減殺を請求し、後継者に侵害額を保証できる資力がない場合には、結局は侵害額分の自社株式を渡さなければならないこともあり得ます。この遺留分への対応策として、遺留分の放棄制度や遺留分に関する民法の特例(経営承継円滑化法の除外合意や固定合意)等があげられますが、民法特例の対象となる会社・経営者・後継者には要件があり(詳細は省略します)、また、非後継者となる相続人らの協力が必要になる等、状況によっては利用できない場合もあります。いずれにせよ、事業の承継を考える場合には、事前検討・事前準備を行うことが大切ですので、個人財産の相続と合わせて早めの事前検討・事前準備を行うことをお勧めします。 小牧事務所 弁護士 奥村 典子
名古屋丸の内本部事務所弁護士 奥村 典子
5月に入って気温も高くなり,名古屋市名東区の猪高緑地の緑も一層色濃くなってきました。
今回は,遺産分割を行うときに直面することがある困った事態についてお話します。
父親が死亡して,遺産分割協議をしようと思ったが,母親に認知症の疑いがある,そんなときに認知症になっている相続人がいても遺産分割の合意ができるのでしょうか。
まず前提として,遺産分割の合意は相続人全員で行わなければなりません。仮に,話し合いができないからといって,相続人の内の1人を含めないで合意した場合,当該遺産分割は無効になります。
当然,他の相続人の署名押印を勝手に行った場合も,遺産分割は無効です。また,遺産分割の合意は,遺産分割の内容を理解して,その善し悪しを判断できる相続人が行わなければなりません。遺産分割の内容を理解して,その善し悪しを判断できることを,意思能力があるといいます。
認知症と一口にいっても程度は様々ですので,認知症の方全てが有効な遺産分割を行えないわけではありません。遺産分割の内容を理解して,その善し悪しを判断できない重度の認知症の場合は,意思能力がないと判断され,有効な遺産分割の合意ができません。
では,意思能力のない相続人がいる場合,どのように遺産分割の合意を行えば良いのでしょうか。
このような場合のために,成年後見制度が用意されています。
成年後見制度とは,意思能力のない人のために,成年後見人と呼ばれる代理人をつける制度です。この制度を利用し,成年後見人をいれて遺産分割の合意をする必要があります。
そして,成年後見制度を利用するためには家庭裁判所に申立をする必要があります。制度の説明や申立のお手伝いもいたしますので,是非一度,愛知総合法律事務所にご相談下さい。
また,このような煩わしい遺産分割協議を避けるために遺言を書くこともおすすめです。遺言についても是非ご相談下さい。
4月に入りようやく春らしい日が増えてきました。高蔵寺に事務所を開設してからはじめての春です。
高蔵寺をはじめ、春日井市近隣の皆様におかれましては、今後とも愛知総合法律事務所高蔵寺事務所にご愛顧のほど、お願い申し上げます。
遺産分割の話し合いが相続人間で整わない場合、裁判所にて遺産分割調停を試みることになります。今回は、遺産分割調停はどこの裁判所で行うことができるのか、また実際に裁判所に行かなければならないかについてお話ししたいと思います。
遺産分割調停は、原則として、相手方の住所地の裁判所か、相続人が合意した裁判所に起こす必要があります。愛知県内には、名古屋市のほか一宮市、半田市、岡崎市、豊橋市にそれぞれ家庭裁判所があり、それぞれ管轄地域が決まっています。相手方が複数人いる場合は、どの相手方の住所地の裁判所を選んでもかまいません。
したがって、他の相続人が遠方に住んでいる場合には、遠方での調停手続きとなることがあります。また、調停は話し合いの手続きですので、書面の提出だけで進めていくことはできず、基本的には本人または代理人が出廷する必要があります。
しかし、遺産分割調停は、遺産の内容や相続人の人数・キャラクターなどによっては長期化する可能性があり、遠方の裁判所で遺産分割調停を行うことは負担になるかもしれません。
このような場合のために、法律上、電話会議システムを利用した調停手続きが用意されています。電話会議システムを利用した場合、裁判所に出廷せずに、電話で調停手続きを行うことができます。
ただし、電話会議システムは「電話の場に第三者がいない」ことを裁判所が確認できなければ利用できません。なぜなら、家事調停手続きは訴訟とは異なり非公開の手続きであり、電話会議も例外ではないからです。弁護士事務所の電話を使うのであれば、第三者はいないことを弁護士が保証する形で電話会議システムが利用できる場合が多いといえますが、ご自宅の電話を使うのは難しいかと思います。
また、弁護士に依頼するのであれば、代わりに弁護士が遠方の裁判所に出廷することもできます。
一般に、相続人の一部が遠方に住んでいる場合は、協議の場が限られるため、遺産分割協議が難航しやすいといえますが、弁護士事務所の活用により道が開けることも多いかと思います。是非お気軽にご相談ください。
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高蔵寺事務所弁護士 服部 文哉
早いもので、2017年に入って1か月がたちました。今回の相続ブログでは、平成28年12月19日の最高裁判所決定(以下、「平成28年決定」とします。)について、かいつまんでお話したいと思います。 この決定について、ニュースなどでご覧になった方は多いと思います。「預貯金が遺産部分割の対象になるかについて、最高裁判所の判例が変更された。」という記事を見て、その影響について心配に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 これまで、預貯金については、相続人間で遺産分割をしなくても、相続の開始と同時に分割され、各相続人が法定相続分にしたがって預貯金を取得する、とされてきました(昭和29年4月8日最高裁判所第一小法廷判決、平成16年4月20日最高裁判所第三小法廷判決)。これに対し、平成28年決定は、「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」という判断を示しました。 さて、以上の内容を見て、疑問に思われることはないでしょうか。特に、平成28年決定の前に遺産分割に参加した経験をお持ちの方は、自分の経験とは違うと思われるかもしれません。 多くの金融機関は、遺産分割前に各相続人が自分の法定相続分に相当する額の預貯金の払い戻しを求めても、簡単にはこれに応じてくれないことが通常でした。遺言がない場合には、相続人全員の実印での押印のある遺産分割協議書と、印鑑証明書がなければ、払い戻しに応じてはくれないことがほとんどでした。また、これまでの判例も、相続人全員の合意により預貯金を遺産分割に含めることは禁止しておらず、家庭裁判所の調停の実務でも、一般的には預貯金を遺産分割の対象に含めるという取扱いがされてきました。このような現実から、平成28年決定の前であっても、預貯金は遺産分割の対象に含まれると思っておられた方が多いのではないかと思います。そのような意味では、この決定は一般的な感覚や銀行などでの実際上の取扱いにあわせたということができるかもしれません。 他方、この決定により、金融機関は、遺産分割協議がまとまるまでは相続人への払い戻しに応じる必要がないと主張する根拠ができたということができます。しかし、遺産分割協議ができていなくても、葬儀費用や相続税の支払いをしなければならない場合があります。そのような場合に、相続人の手持ちの資金が十分でないと、その支払に苦労することが考えられます。このような場合に備え、遺言があれば相続人同士の争いを防止できるだけでなく、預貯金の引き出しがスムーズにできます。その際に、自筆の遺言だと、金融機関から遺言の有効性に疑問が呈されることがありますので、公正証書遺言の作成をおすすめします。当事務所では、遺産分割や遺言の作成のご依頼も数多くお受けしておりますので、一度ご相談いただければと思います。
弁護士 水野 憲幸
弁護士 水野 憲幸
日進赤池事務所で勤務しております、弁護士の佐藤康平と申します。日進市は若い方が多い街なので、相続の話題はピンとこない方が多いかもしれませんが、「相続放棄」という言葉は、聞いたことのある方が多いと思います。亡くなった方が多額の負債を抱えていたような場合、残された相続人としては、そのような負の遺産は、受け継ぎたくないものです。また、亡くなった方の家業を長男が引き継ぐような場合、他の相続人は相続を辞退したいということがあるかもしれません。相続放棄とは、そのような時に、相続人が被相続人(亡くなった方です。)から受け継ぐべき遺産の全てを、放棄することを言います。さて、相続放棄の手続は、原則として、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内、つまり、自分が相続人となっていることが分かってから3か月以内に、する必要があります(民法915条1項本文)。これを、「相続放棄の熟慮期間」といいます。ところが、亡くなった方と相続人との関係が疎遠であったり、亡くなった方の財産や負債が多岐にわたっていたりするような場合、3か月では相続放棄をした方が良いのか、しない方が良いのか、判断ができないことがあります。そのような場合、上記「相続放棄の熟慮期間」が経過していない段階であれば、家庭裁判所に申立をすることによって、「相続放棄の熟慮期間」を延長してもらうことができる可能性があります(民法915条1項ただし書)。同申立が認められた場合には、その間に被相続人の財産を調査して、相続放棄をするかどうかを決定することになります。では、相続放棄をするかどうか判断できないまま、「相続放棄の熟慮期間」が経過してしまった場合は、どうでしょうか。この場合、残念ながら、原則としては、相続を認めてしまったことになり、相続放棄をすることは出来なくなってしまいます(民法921条2号)。しかし、この場合でも、最高裁判所の裁判例によれば、特別な事情がある場合には、相続放棄が認められることがあります。同最高裁判所の裁判例は、詳細は割愛しますが、相続財産が全くないと誤信したことにつき、相当の理由がある場合には、相続財産の一部又は全部を知った時から、相続放棄の熟慮期間が始まるものと、判示しています。話がややこしくなってきてしまいましたが、要するに、1 相続放棄は、原則として、亡くなってから3か月以内にする必要がある。2 3か月では判断できない事情がある場合、期間の伸長が認められることがある。3 3か月が経過してしまった場合、原則として、相続放棄は出来なくなる。4 ただし、特別な事情がある場合には、なお相続放棄が出来る可能性がある。ということになります。相続放棄の手続は、簡単にできそうに見えて、実は上記のような色々な問題が含まれています。また、上記のような期間制限がありますので、迅速に対応する必要があります。弊所では、相続放棄の熟慮期間が経過してしまった場合の相続放棄の依頼も、多数お受けしております。相続放棄についてお悩みの方、3か月を過ぎてしまい、相続放棄をあきらめていた方、ぜひ一度、弊所までご相談下さい。また、相続放棄に限らず、相続についてお悩みの方も、ぜひ一度、弊所までご相談下さい。
日進赤池事務所 弁護士 佐藤康平
日進赤池事務所 弁護士 佐藤 康平