私が遺言のご相談をいただく場合、基本的には、後に遺言の効力に関する紛争を防止するために公正証書遺言の方法をおすすめしています。
特に、会社を経営されている方の場合、会社に提供している個人資産や株式について、きちんと遺言で整理していなければ、相続人間の紛争にとどまらず、会社の経営機能がストップし従業員・取引先にもご迷惑をおかけする事態にもなりかねません。
このように、紛争予防に有効な遺言ですが、急な病気などで署名・押印や公証役場に行くこともままならない場合も考えられます。このような場合、特別な方法として危急時遺言の方法がとられることがあります。
危急時遺言とは、遺言の内容を複数の証人に口頭で伝えてもらい、証人がその内容を書面化することによって遺言を作成する方法です。
このように書くと非常にシンプルですが、証人の人数や資格、記載内容の適切さ、家庭裁判所への申述など検討や対策が必要な事項は多数あります。特に、危急時ですから迅速な対応が求められます。
弊所には、司法書士・弁護士も所属しておりますので、遺言の内容・作成方法を弁護士が確認するだけでなく、不動産・税務も含めた検討を迅速に行う体制が整備されています。
ご親族の急な危篤など緊急時のご親族の心情からすれば、相続財産の解決まで検討することは非常に難しいのですが、遺言の有無だけでも後の手続の簡易さに大きな影響を与えます。お困りの際は、お気軽に弊所までご相談ください。
弁護士 米山 健太
「相続放棄をしながら生命保険金を受取って使ってもいいの?」
こんなご質問を受けることがよくあります。
相続人が相続財産を処分したときには、相続放棄は認められません(単純承認)。そのため、生命保険金を受け取って使うことが相続財産の処分に当たるかどうかを考える必要があります。いくつかの場合に分けてみましょう。
① 被相続人が自分を被保険者とし、特定の相続人を保険金受取人と指定した場合
保険金受取人と指定された人は、固有の権利として生命保険金を受け取れるので、相続財産の処分には当たりません。
② 被相続人が自分を被保険者とし、保険金受取人を「被保険者又はその死亡の場合はその相続人」などと抽象的に指定した場合
①と同様に、相続財産の処分には当たりません。なお、相続人が複数いる場合には、相続分の割合に従って保険金を受け取る権利を取得します。
③ 被相続人が自分を被保険者とし、保険金受取人を指定しなかった場合
保険約款等に従って判断することになりますが、こうした場合に「被保険者の相続人に支払う」と約款が定めていた事例において、相続人が固有の権利として生命保険金を受け取れるとした例があり、この場合には、相続財産の処分には当たりません。
以上のように、生命保険金を受け取って使うことは、相続財産の処分には当たらず相続放棄との関係で問題はない場合が多いと言えますが、判断に迷われる場合には、弁護士にご相談ください。
弁護士 深尾 至
親族の方が亡くなられると,相続が発生します(民法882条)。
亡くなられた方(以下では「被相続人」といいます)に帰属していた,不動産,預貯金,有価証券,車も含む動産といった財産は,原則として遺産となり,遺産分割の対象になります。
では,例えば被相続人の方が,お孫さん名義で預貯金を持っていた,という場合には,当該預貯金は,遺産分割の対象になるでしょうか。
そもそもこの預貯金は,被相続人の方の物でしょうか,それともお孫さんの物なのでしょうか。
まず,法律上は,
- 誰の原資によるものか
- 預金の通帳,印鑑を誰が管理していたのか
- 預貯金の入出金,継続または解約は誰の意思に基づいて行われていたのか
といった観点から判断されることになります。
また,当事者間で遺産として扱う,扱わない,ということが決まれば,それを前提にすることが基本的に可能です。
話し合いで解決できない場合には,「遺産確認の訴え」で裁判所に判断してもらうことになります。いわば遺産分割の前哨戦ですが,費用も時間も余計にかかってしまうのが難点です。
なお,近時は金融機関における本人確認が厳しく,他人名義の預金口座作成が難しくなっているので,今後はこのような問題は起きにくくなるのかもしれません。しかしながら,既に他の家族名義の財産がある,という場合には,依然として生じうる問題です。
最後になりますが,以上の内容は,あくまで遺産分割の問題であることにご注意ください。
相続税申告が必要な財産かどうかに関しては,以上の内容は必ずしもあてはまりません。当事者間で遺産から除外することを決めたとしても,相続税申告が必要な場合もあります。
弊所には,弁護士のみならず,税理士,司法書士,社会保険労務士,行政書士が所属しており,相続税申告を含めた相続に関する問題を全てワンストップでご相談頂くことが可能ですので,まずはお気軽にご相談ください。
岐阜大垣事務所 弁護士 加藤純介
弁護士 加藤 純介
被相続人が遺言書をしたためることなく亡くなられ、その土地・建物が被相続人名義となっていた場合、その不動産の登記名義を相続人に変更するためには、遺産分割協議を行わなければなりません。
たしかに、相続人間での遺産分割協議が円滑に行われ、何ら争いなく遺産分割協議書を作成できるのであればそれに越したことはありません。しかしながら、相続人同士の信頼関係がなく、互いにいがみ合っている場合は、相続人間で遺産分割協議書を結ぶというのは困難を極めます。
その場合、遺産分割調停手続を利用されるという方法を取られてはいかがでしょうか。遺産分割調停の申立ては、裁判所に対して申立てを行うのですが、あくまで当事者間の話合いの延長ですので、裁判所を介して遺産分割協議の話合いを前に進めることができます。当事者間では、感情的な対立があって冷静な話合いが困難なことが多々ありますが、間に冷静な調停委員を介して遺産分割協議を行うことで、話合いが進展することが多いです。
冒頭お伝えしたように、そもそも被相続人が公正証書遺言をしたためておけば、その遺産の分配を決めることができますので、相続人間の無用な争いを可能な限り避けることができます。ですので、紛争予防の観点から土地・建物・預貯金等について、予め公正証書の形で遺言書を残されておくことをおすすめします。この公正証書遺言があれば、相続人間で遺産分割協議をすることなく、土地・建物・預貯金等の名義変更を行うことができますので、簡便です。
このコラムが少しでも相続で悩まれている方の一助になれば幸いです。
弁護士 横田 秀俊
遺言等により,一部の人にたくさんの財産が渡ってしまう場合でも,最低限の取り分として,遺留分は確保できる,というのは耳にしたことがあると思います。では,実際の計算はどのようにすべきなのでしょうか。今回は,一例をもとに,実際に計算してみましょう。
相続人があなたと兄の2人(どちらも亡くなった方の子)だけであり,財産が土地(1000万円相当)のみである場合を考えてみます。亡くなった方は,「土地は兄に相続させる」という遺言を残しており,あなたは遺留分を請求しようと決意しました。では,あなたは,兄に対し,いくらを請求できるのでしょうか(なお,相続のタイミングにもよりますが,改正後の民法では,遺留分侵害額に相当する額の金銭を請求できることになっています)。
遺留分は,
遺留分を算定するための財産の価額×遺留分割合×遺留分権利者の法定相続分
という計算式で計算します。
今回のケースだと,遺留分割合は1/2,あなたの法定相続分は1/2なので,
1000万円×1/2×1/2=250万円
が遺留分ということになります。
そして,今回のケースでは,他に財産の動きが特にないので,上記250万円を兄に請求できることになります。
今回のような単純なケースだと,計算もそれほど難しくはありませんが,実際の相続では,計算がもっと複雑になることが珍しくありません。また,
・亡くなった方が借金を抱えていたらそれはどう考慮するのか?
・あなた自身も遺産を少しもらっていた場合,それは遺留分から差し引くのか?
・相続人がもっとたくさんいて,その人たちに多くの財産が渡ってしまう場合,誰にいくらずつ請求できるのか?
等,悩ましい問題もたくさんあります。遺留分についてお悩みの方は,一度,お気軽にご相談ください。初回の相談は1時間まで無料となっています。
弁護士 松山 光樹