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離縁手続の進め方
1 高齢化社会,そして少子化社会に伴い,養子縁組の活用が増えています。非課税枠を増やすという副次的な目的を有する養子縁組も多く見られます。
2 しかし,一度養子縁組をしたら,簡単には解消できない,ということも知っておくべきです。離婚に比べて数は多くはありませんが,「離縁をしたい」,あるいは「離縁を求められた」という相談も受けることがあります。
3 離縁については,民法811条から記載があります。養子縁組をした当事者は,その協議によって離縁をすることができます。協議離婚と同じように,当事者の協議が整えば,離縁をすることができるのです。
4 しかし,一方が離縁を望み,一方が離縁を拒んだ場合は,どのように手続が進むのでしょうか。
5 このような場合,家庭裁判所に調停を申し立て,調停の場で互いに協議することになります。そして調停もまとまらなければ,離縁訴訟を提起することになります。
6 名古屋家庭裁判所では日々多数の離婚調停,遺産分割調停が申し立てられておりますが,離縁調停は決して件数は多くはありません。事例の蓄積も離婚や遺産分割ほどは多くはなく,どのような場合に離縁ができるのかは明確な基準はありません。
7 民法814条は,縁組を継続し難い重大な事由がある場合に離縁できると定めています。裁判例上は「養親子としての精神的・経済的な生活共同体の維持もしくはその回復が著しく困難な程度に破綻したとみられる事由がある場合」とされており,客観的な破綻状態と縁組の目的などの縁組成立時の事情を相関的に勘案して判断すべきとされています。
8 例えば成年になってから養子となる場合は,家業を継ぐ,相続をする,扶養をする,などの目的があるのが通常です。この場合,当初の目的が達成できなくなったか否かが重要になります。
9 また,暴行や虐待があるケースや,金銭や不動産を巡り訴訟等になった場合なども,破綻が認定されやすい事由です。
10 単なる性格の不一致で離縁が認められるかは事案によります。対立,葛藤が継続し,養親子関係が完全に冷却状態になっている必要があるとされます。例えば何十年も前に養子として迎え入れ,自らが年を取り相続対策のために離縁を求めることもありますが,このような場合は,簡単に離縁が認められるとは限りません。
11 離縁に関しては,裁判例の集積が乏しく,見通しを立てるのが難しい分野です。また数少ない裁判例を分析すると,調停時や交渉時の発言も結論を決める一要素としているように思われる案件も散見されます。感情の機微に触れる部分でもありますので,有利・不利で決めることでもないのかもしれませんが,やはり離縁を求める際,あるいは求められた際は,今後どのように手続が進んで行くのか,どのような対応を取るべきなのか,一度は弁護士に相談をしてから,手続を進めた方がよいでしょう。
日進赤池事務所 弁護士 森 田 祥 玄
日進赤池事務所 弁護士 森田 祥玄